FEATURED
2019.12.12 THU
Pygmalion
シャネル・ピグマリオン・デイズ 2019
グランドフィナーレ レポート
15年目を迎えたシャネル・ピグマリオン・デイズ。今年もシャネル・ネクサス・ホールは、若手音楽家たちに演奏の機会を提供し支援してまいりました。
2019年の締めくくりとして、12月4日(水)に「シャネル・ピグマリオン・デイズ2019 グランドフィナーレ」を開催し、1年間演奏を重ねてきた5名のアーティストたちが、シャネル・ピグマリオン・デイズにお越しいただきました皆さまに、感謝の思いをこめて演奏しました。今回は2019年度最後を飾るコンサートの模様をお届けします。
左から:小井土文哉さん(ピアノ)周防亮介さん(ヴァイオリン)
北川千紗さん(ヴァイオリン)吉見友貴さん(ピアノ)久末航さん(ピアノ)
All photos © T. Tairadate
北川 千紗さん(ヴァイオリン)
ヴィエニャフスキー: 創作主題による華麗なる変奏曲 作品15
メンデルスゾーン (ハイフェッツ編曲):「歌の翼に」作品34-2
シャネル・ピグマリオン・デイズ2019年参加アーティストとして選んでいただいてから、これまでにない視点で6回のプログラム準備、メイク、衣装、トーク、演奏に至るまで全ての過程で、耳を傾け、あくまでも奏者の意思を尊重し丁寧にご指導くださいましたスタッフの皆さま方、そして幾度かご来場くださりお声をかけてくださった皆さまに深く感謝いたします。これからの自分にとって有意義なアドバイスとご支援をいただくことができた、大変貴重な1年間でした。1年前、グランドフィナーレの舞台を拝見し、次に自分も同じ場所に堂々と立っていられるのかとても不安になりました。しかしシリーズが始まると、お客さまとステージ上の演者との距離は想像以上に近いもので、このシャネル・ネクサス・ホールで豊かな時間を過ごそうと、皆さまが本当に楽しみに来てくださっているのを感じることができ、自分自身も回を重ねる毎に変わっていきました。今年15周年という記念すべき年に、ピグマリオン・デイズ参加アーティストとしてステージに立てましたことを誇りに思います。誠にありがとうございました!
久末 航さん(ピアノ)
シマノフスキ:ピアノのための3つの詩 『メトープ』 より「セイレーンの島」
メンデルスゾーン:幻想曲 嬰ヘ短調 作品28 「スコットランド風ソナタ」
「全6回のリサイタルを通して一つの大きな物語を描き出したい」という意気込みとともに、シャネル・ピグマリオン・デイズに取り組んだ1年間でたくさんのお客さまとのかけがえのない出会いや交流に多く恵まれました。そして、ピアノ、音楽、また自分自身としっかり向き合うことができたという実感・喜びをいま噛み締めています。『毎回、プログラムに何かしらのメッセージを込めて聴衆の皆さまにお届けする。そのために、あまり耳馴染みの少ない作品や難解な現代作品も積極的に取り入れ、風変わりな曲の配置でもまずは試してみる』。そのような試みを心おきなく果たすことができたのは、どんな些細なアイデアや小さな可能性でもそれをしかと受け止めてくれる、シャネル・ピグマリオン・デイズという場だからこそだったのだと感じています。この1年間、あたたかな拍手とともに見守り続けて下さったお客さま、そして様々な面でサポートしてくださったシャネル・ピグマリオン・デイズの全ての関係者の方々に心より感謝申し上げます。
小井土 文哉さん(ピアノ)
ブラームス:創作主題による変奏曲 ニ長調 作品21-1
スクリャービン:焔に向かって 作品72
今年1年は私にとって、これまでの人生の中で間違い無く最も濃密なものでした。昨年10月に日本音楽コンクール、今年2月にイギリス・ヘイスティングス国際コンクールに参加し、それらの優勝記念などでコンサートに出演しました。その中でも全6回のシャネル・ピグマリオン・デイズは、私にとって最大の経験となりました。独奏、室内楽、協奏曲とレパートリーを増やしつつ、それら全てを聴衆の皆さまに聴いていただく経験は、日々少しずつ成長していることを、日々生きていることをとてもリアルに感じられるものでした。舞台で演奏する中で、私が感じる1番好きな時間は「静寂」です。音と音の間、そして音楽的静寂。これはクラシック音楽が持つ最も大きな魅力だと私は思います。この魅力はホールで、実際にピアノを前にして最大限発揮されます。そしてその空間で魅力を生むためには、聴衆の皆さまが必ず必要なのです。今の時代は、本当に沢山の情報で溢れています。インターネットを開けばすぐに知りたいもの、見たいもの、聴きたいものが得られます。そんな中で、そこには無い、他では得られないような感動を与えられるような音楽家を目指して行きたいと思います。これから本格的な留学生活を送りますが、今後の成長を聴いていただけましたら幸いです。1年間、本当にありがとうございました!
吉見 友貴さん(ピアノ)
フォーレ (アール ワイルド編曲):夢のあとに 即興曲
ラヴェル:ラ・ヴァルス
今までご来場いただいたお客さま、そしてシャネル・ピグマリオン・デイズ関係者の皆さまに心より感謝を申し上げます。現在は、身の回りのもの全てが発達し、なに不自由無く生活ができる世界となりましたが、それと同時にふと、「人間が存在する意義とは?」というのも感じざるを得ません。今まで、音楽が好きという気持ちだけで勉強を続けてきました。しかし今年は、沢山の素晴らしい演奏家がいる中、今後どのように音楽と向き合っていきたいのか、自分が音楽を通して何を伝えられるのかという「自分が音楽をやっていく意義」を、無意識のうちに考えていたような気がします。全6回のリサイタルを通して、多くの作曲家、作品に触れられたことはもちろん、毎回違う世界を皆さまと共有することが出来たことは、何事にも代え難い経験となりました。同じ会場で弾いていても、いつも新たな景色、幻影が見え、まるで鮮やかでありながら淡くも儚くもある夢の世界にいるようでした。そして、自らの音楽というものも同じ会場で演奏することによって、浮き彫りになっていったように思えます。私の「夢のあとに」は何が待っているのでしょうか。まだ見ぬ広い世界を求め、これからも深く音楽を追求していきたいと思います。
周防 亮介さん(ヴァイオリン)
ワーグナー:アルバムの綴り
ワックスマン:カルメン幻想曲
この1年は、シャネルでのリサイタルが基盤にあり、そして毎回の演奏会には私の中で『挑戦』と『成長』を目標として熱意を持って臨んでまいりました。全6公演あったリサイタルシリーズですが、それぞれの回、そして全ての曲に強い思い入れと美しい想い出があり、それらは私のエネルギーとなり、また大きな励みや支えとなりました。このリサイタルを通して毎回たくさんのことを学び、音楽家として貴重な経験と成長をさせてくださった全ての関係者の皆さま、そして温かくお聴きくださった多くのお客さまとの出逢いに心から感謝申し上げます。ここに私が心に留めているココ シャネルの言葉があります。“To be irreplaceable, you must be different.” (かけがえのない存在であるには、人と違っていなければならない。) 『自分らしく』や『自分だけの』ということはずっと大切にしていることですが、これからも更に音楽への愛や追求心を深め、私が音楽から感じ取った、そして私自身が信じる音楽を奏で続けていきたいと思います。
All photos © T. Tairadate