京都が最も美しい春の時期に、寺社や町家など京都ならではのロケーションを舞台に、世界各国から選び抜かれた写真で街全体が満たされるKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭。シャネル・ネクサス・ホールは、2013年のスタートより、この写真祭に参加し、展覧会を開催しています。
2018年は、東京・銀座に続き、1950年代からファッション写真の表現に新風を吹き込み、そのジャンルの黄金期を担った写真家、フランク ホーヴァット写真展「Un moment d’une femme」を開催いたします。
写真家フランク ホーヴァットは、1950年代からファッション写真の表現に新風を吹き込み、このジャンルの黄金期を担った写真家の一人として知られます。日本国内において、本格的な初個展となる本展覧会では、《女性》を切り口に、後世に多大な影響を及ぼしてきた代表作や、ジャーナリスティックな初期作、私的なプロジェクト作品などが出展されます。
ホーヴァットがフォトジャーナリズムに触発され写真家として活動を開始した40年代当初、そのアプローチは人間主義的な視点を踏襲するものでした。パキスタンやインド、イギリスと世界中を渡り歩きながら、「パリ・マッチ」や「ピクチャー・ポスト」などの雑誌に寄稿し、1955年にはニューヨーク近代美術館で開催された伝説的な展覧会「ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)」に選ばれています。
1954年、パリに拠点を置いたホーヴァットは、このファッションの都と、ファッションをまとう女性たちに魅了されます。ファッション関連の仕事に注力した彼は、モデルたちの突発的な、もしくは一風変わった配置や、たまたま居合わせた人物を被写体として取り込むなど、ルポルタージュ的感覚を取り入れた斬新な表現を探求しました。また、女性を撮ることに虜となった彼の作品の主題は、衣服だけでなく、無防備でさりげない色気のある女性像へと向かっていきます。そして、ホーヴァットは世界で最も影響力のあるファッション写真家の一人となったのです。その功績は、近年発行の写真集『Frank Horvat: Please don’t smile』(Hatje Cantz刊 2015)にも見ることができます。
一方、ホーヴァットは私的な写真プロジェクトにも取り組み、人物や街、風景、彫刻をテーマに書籍を出版してきました。2013年には、彼の幅広い活動を網羅したレトロスペクティブ写真集『house with fifteen keys』(Terre Bleue 刊)を出版し、同名の回顧展を2014年、セラヴェッツァ(イタリア)、ニース(フランス)で、2015年にはベルリン(ドイツ)で開催しています。
フランク ホーヴァットは、今年、卒寿を迎えます。本展覧会を構成するのは、この写真家を象徴する有名なファッション写真だけでなく、過去も現在も彩りにあふれる彼の人生における、思い出深い瞬間を捉えた写真の数々です。