京都が最も美しい春の時期に、寺社や町家など京都ならではのロケーションを舞台に、世界各国から選び抜かれた写真で街全体が満たされるKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭。シャネル・ネクサス・ホールは、2013年のスタートより、こちらの写真祭に参加し、公式プログラムとして写真展を開催してまいりました。2015年は、東京銀座で開催いたしました「Alaska」マルク リブー写真展を、会場を古都京都に移し、新たな環境の中で再び皆様にお届けいたします。
マルク リブーは、アンリ カルティエ=ブレッソン、ロバート キャパらとともに写真家集団マグナムの一員として世界中を駆け巡り、激動の20世紀をとらえてきたフランスを代表する写真家の一人です。1958年、3年にわたるアジア・極東諸国での取材を終えたリブーが次に向かったのはアラスカでした。はるか以前にゴールドラッシュの熱狂は終焉し、新たな金脈となる石油は未だ地下深くに眠っていた当時のアラスカは、広大な未開の土地でした。あらゆる醜悪なものを消し去る雪、沈黙が支配する大地。リブーは子どものような驚きを持って、白いキャンバスに描かれる点描のようにアラスカの風景をレンズで切り取っていきました。
この度の展覧会では、これまでほとんど発表されることのなかった、知られざる名作、「Alaska」のシリーズを、創業280年を迎える京都の帯匠、誉田屋源兵衛の町屋奥に佇む「黒蔵」にて展示いたします。マルク リブーの確かな眼差しと詩情が、写真の持つ本質的な力を再発見させてくれるでしょう。新旧が交差する京都ならではの空間、黒壁の中に広がる雪原の世界をどうぞお楽しみください。
誉田屋源兵衛 黒蔵
Kondaya Genbei Kurogura
誉田屋源兵衛は呉服問屋が立ち並ぶ室町で江戸期から続く帯匠。280年近くもの間、帯問屋を手掛けてきたが、現当主10代山口源兵衛が帯の制作を始め帯匠となった。明治期から大正期にかけて建てられた店舗は、間口からは想像もつかないほどの敷地が広がる大店町屋で、宮大工の名棟梁、三上吉兵衛による貴重な町屋だ。敷地の一番奥にある蔵を改装した建物「黒蔵」は墨色に塗られ、増改築した六角形のドームが印象的な、和洋のバランスが美しい洗練された空間である。