映像に写真、それを取り囲むインスタレーションにいたるまで、この展覧会のために、東京、パリ、ニューヨークで製作された作品は、一点一点がまるで一冊の本を構成する章のように、互いにつながっています。例えば俳優アストリッド ベルジュ=フリスベとの親密なビデオノート、虫眼鏡を使わなければ見えないほど小さな、女優たちのポートレート・コレクション、はたまた、眼前に繰り広げられる恋人たちの別れのシーン―これらを始めとする作品の数々は、レヴィ独自の先鋭的な切り口で、さまざまな要素が詩的に絡み合い、観る者の心にある感情で訴えかけていきます。
来場者は作品に誘われ、時には一緒に戯れるように、作品に込められた呼びかけ、喜び、怒りに触れることでしょう。独創的で挑発的、そして華やかに「美」を捉えた作品が揃うジュリアン レヴィの作品は、はたして悲しいのか、美しいのか。笑顔にさせるのか、涙を誘うのか。思いを馳せながら作品を体感した後には、訪れる人の感情も大きく揺れ動かされているはずです。
活躍の場を広げるアストリッドが登場する“From there all I can hear is the batting of your eyelashes”やモデルの水原希子が被写体となった“All we have is now”など、シャネルから得たインスピレーションがところどころに見え隠れしつつ 6つの章から成る作品の数々が、鑑賞する者の心に語りかけます。
極端なまでに概念や哲学を盛り込みながらも、それを完璧な美的感覚で包み隠すとともに、それぞれが独自の様式で表現された作品は、その感じ方を無条件で観る者に委ねていく。「目で見る詩のコレクション」と本人が表現する、ジュリアン レヴィの作品をどうぞお楽しみください。