本展では、先駆的な作品で注目を集める中国出身のアーティスト、フェイイ ウェン(Feiyi Wen)とパン カー(Peng Ke)の新作を紹介します。両作家に共通しているのは、驚異的な経済成長を見せていた1990年代の中国で生まれ育ち、その後海外で学び、アーティストとしての活動を行っていることです。どちらも写真に根ざした活動を展開しており、レンズを通した表現をベースにしながらも、さまざまなメディアや技法を探求し、表現の幅を広げています。
フェイイ ウェンはロンドン在住で、2020年にスレード美術学校で博士号を取得。自然や風景を主題に自身の撮影したイメージと、ときにはファウンドフォトのイメージを混ぜ合わせ、章立てされたシリーズ作品に展開しています。またフェイイ ウェンは、写真に映されたイメージと、見る者が見ようとするイメージとの関係に関心をもち、追求し続けています。例えば、彼女の写真の中には中国の山水画を想起させるような、あるいは日本で撮影されたように見える題材や構図がありますが、実際には最近の作品のほとんどは、イギリスとウェールズで撮影されています。写真表現を探求しながら、露出レベルや現像技術、用紙や印刷の手法などの試行錯誤を重ねてきたフェイイ ウェン。本展では、ゼラチンシルバープリントとライスペーパー* にジークレー印刷をした新作16点を発表予定です。
*カミヤツデや麻などの繊維を原料とした薄く不透明で丈夫な紙
パン カーは2015年にロードアイランド・スクール・オブ・デザインを卒業後、カリフォルニアで数年を過ごし、現在は中国と北米を行き来しながら、アジアの近代化の過程、特に人口の多い都市において、集団から生み出された文化・歴史に長年関心を寄せてきました。創作を通して、急速な発展を遂げる地域で育まれる熱狂や嘆き、レジリエンス、そしてその土地と結びついた生活を検証しています。最近では2022年に、中国の出稼ぎ労働者の居住空間や、彼らの多くが住む「アーバン・ビレッジ(城中村)」(都市のなかに取り残された、労働者の密集居住エリア)を題材にした壁面のアッサンブラージュ《Bay Windows(出窓)》をタイクン・コンテンポラリーで発表しました。エキゾチックな美的感覚を模倣した装飾的な窓は、彼らの生活、その内面的な側面や、夢とその挫折を喚起させます。今回は、このシリーズの続編ともなる6点の新作を発表します。
2人の作家は、我々を取り巻く現代の状況を思慮深く見つめる方法を提示しています。自然界に見られるフォルムを深く熟考する者と、社会的な差異を表すモノや類型を両義的に受け入れる者。また、フェイイ ウェンの穏やかで自然に見えるイメージは、実際には厳密に管理・編集されており、一方パン カーは、現代の都市生活の人工的で均質なものに、ロマンスともいうべき温かな眼差しを投影しています。
本展のために、両作家はそれぞれの転換となる重要な新作を発表します。2人のアーティストとその実践をつなぐ対話を交えながら展示することで、中国現代アート界における新しい世代を代表する作家を紹介します。