この度、シャネル・ネクサス・ホールでは、20世紀におけるもっとも重要なアーティストの一人として今なお注目を集める写真家ロバート メイプルソープの作品展を開催いたします。本展は、シャネル銀座ビルディングの設計を手がけるなど、国際的に活躍する建築家ピーター マリーノのプライベートコレクションから、静物や花、ヌード、そして肖像等を写した作品、およそ90点を展示するもので、同作家の多彩な作品群がこれほど網羅的に日本で一般公開されるのは、2002年以来初めてのことです。
本展の企画・構成にあたったピーター マリーノは、ネクサス・ホールの空間を、3つの小展示室に分割しました。展示はメイプルソープによる複雑な作品群の二元性を探求する内容となっており、鑑賞者がギャラリーを進むにつれ、主題の強烈さが増していくように作品がグループ分けされています。
構造物としての肉体、静物や彫像の形式的な古典主義から、より挑発的で、時として物議をかもす、被写体をあからさまに写しとった表現へ。それら全ては、自然美と肉体美、束縛と破壊といったテーマに迫るものです。
白いフロアと白い壁に覆われた最初の2つの展示室には、古典的な彫刻・静物・体の部位のクローズアップ、そして布をまとった人物の写真が、黒い木枠に額装されて展示されます。そして、第3の展示室が黒一色の空間によって展覧会を締めくくります。より挑発的な作品が、メイプルソープならではの花の写真とともに、黒革のような壁に並列して展示されます。
「Memento Mori(メメント モリ)」(死すべき運命を芸術的あるいは象徴的に思い起こさせようと、しばしば視覚的に表現されるラテン語のフレーズ)という幾分皮肉な展覧会タイトルは、被写体の刹那的な特質や作家の早すぎる死を思いおこさせます。メイプルソープによる作品群が、審美的、社会的、政治的に大きな影響力を持ち、一時代の定義づけにまで寄与したことで、不朽の名作となり、受け継がれていく遺産となったこととはあまりに対照的です。
本展は、同作家への理解を世界的に広めるプロジェクトの一環として開催されます。ゲストキュレーターを招いた個展の開催は2003年より継続中であり、直近ではマリーノのキューレーションによる「XYZ展」(ギャルリー・タデウス・ロパック、パリ、2016年1月)があり、他に、ロサンゼルス郡立美術館とゲティ美術館で同時開催された回顧展「ロバート メイプルソープ」などが挙げられます。また、2016年に米国のテレビネットワークHBOが製作し、エミー賞候補になったドキュメンタリー映画「Mapplethorpe: Look at the Pictures」では、世界で最も重要なメイプルソープ作品のコレクターの一人としてピーター マリーノが登場しています。