マルク リブーは、アンリ カルティエ=ブレッソン、ロバート キャパらとともに、写真家集団マグナムの一員として世界中を駆け巡り、激動の20世紀をとらえてきたフランスを代表する写真家です。1958年、3年にわたる中東・アジア諸国での取材から戻ったリブーが次に向かったのがアラスカでした。はるか以前にゴールドラッシュの熱狂は終焉し、新たな金脈となる石油が未だ地下深くに眠っていた当時のアラスカは、広大な未開の土地でした。あらゆる醜悪なものを消し去る雪、沈黙が支配する大地。リブーは子どものような驚きを持って、白いキャンバスに描かれる点描のようにアラスカの風景をレンズで切り取っていきました。この度の展覧会では、これまでほとんど発表されることのなかった知られざる名作「Alaska」のシリーズより、厳選した作品を展示いたします。マルク リブーの確かな眼差しと詩情は、写真の持つ本質的な力を再発見させてくれます。