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FEATURED

2021.8.17 TUE

Pygmalion

シャネル・ピグマリオン・デイズ 2021
水野 優也 インタビュー

選ばれた5名の若手演奏家たちに、リサイタルの機会を提供するプログラム、シャネル・ピグマリオン・デイズ。昨年より新型ウイルス感染拡大防止のため公演中止が続いていましたが、約1年半ぶりに今月15日より再開しました。

初回のコンサートに先立ちまして、留学先のハンガリーから帰国し、日本に長期滞在中の水野優也さん(チェロ)に近況を伺いました。

-留学先のハンガリーはロックダウンの時期があったりと、大変な状況が続きましたね。今はどのようにお過ごしでしょうか。
実は昨年の11月から日本に滞在しています。10月末に一度ハンガリーに戻りましたが、10日間の隔離中に翌週からのロックダウンが決まってしまい、先生に一回だけ会っておいしいものを食べてとんぼ返りしました(笑)その後、今年3月にはハンガリーに戻る予定でしたが、再び感染者が増えてしまって。すべてオンライン授業になったので、そのまま日本で授業を受けていました。5月に終了して今は夏休み中です。9月の新学期にはハンガリーに戻る予定なので、無事に対面授業が始まることを願うばかりです。

 
-オンラインレッスンはいかがでしょうか?
去年の3月からほとんどオンラインレッスンになり、もう結構慣れました。オンラインでできることは教わっているつもりですが、やはり対面レッスンでない分、自分の中に染みつく部分が少ないかなと思います。特に僕の先生は弾いて示してくれるので、とにかく今は「先生の音が聴きたい」というのが素直な気持ちです。普段は先生の音にハッとさせられる瞬間が多いので、早く先生に会いたいです。最後に実際に先生の音を聴いたのは、去年の11月で、その前は3月なので・・・早く聴きたいですね。

 
-思いがけず日本に長期滞在することになりましたが、ハンガリーと日本、コミュニケーションはどのように取っていましたか?
僕の先生は連絡手段にメールは使いません。今まで電話しか出来なくて、日本から連絡するのがものすごく難しくて。でもオンラインレッスンが始まってSkypeを使うようになったので、連絡手段が一つ増えました(笑)一気に便利になったので、生徒にとってはすごく助かります。

 
-コロナ禍でもこの一年間、多くのコンサートに出演されていましたね。
このような状況下ということもあって、海外アーティストが来日できなかったり変更があったりで、協奏曲を演奏するチャンスをいただいたこともありました。直前に決まることもあったので、よりフレキシブルに動けるようになったかなと思います。大舞台で演奏できることは演奏家にとって一番の勉強だと思うので、そういう意味では日本にいてよかったこともたくさんありました。無観客でしたが、シャネルでのコンサート収録にも参加できました。ホールに本当に誰もいないと、僕は空気中の粒が動いているような感覚になるんです。収録の時はスタッフの方々がいらっしゃったのでそういう感覚にはなりませんでしたが、一人でもいればその人のために弾こうという気持ちになります。

 
-いよいよピグマリオン・デイズが再開しましたが、8月21日と8月29日の演奏プログラムについて、今回の曲目を選んだ理由を教えてください。
コンサート配信時にもお話ししましたが、最初に決めたピグマリオン・デイズのコンセプトが「ベートーヴェンの作品を全部演奏する」というものでした。去年は生誕250年で、遠い昔のことですが、ベートーヴェンの作品を勉強することはどの楽器の奏者にとても大切なことだと思うので、これからも続けていきたいなと思っています。

曲目を選ぶにあたっては、どちらを先に決めるかは難しいのですが、まず「ピアニスト」を決めて、この人とこういう曲を演奏したら楽しそうだな、いい演奏が出来そうだなという曲目を選んでいます。このシャネルでのシリーズでは、「同世代のピアニストと演奏したい」という想いがあります。今まで先生に教えてもらって一緒に演奏する形が多かったのですが、ピアノとチェロのデュオという形になると対等であるべきだと思うので、同世代のピアニストにお願いして、一緒に音楽を作る過程を共有出来たらなと思っています。

ベートーヴェンのチェロ・ソナタ3番はピアノとチェロが対等な曲です。シューベルトのアルペジオーネソナタには特に思い入れがあり、高校一年生の最初の試験で「美しい曲が好きだから弾きたい」と先生に言って弾いた曲でした。でも、それが間違いだったと思うくらい、技巧的にも音楽的にもすごく難しくて、それ以来ずっと勉強し続けている作品です。そんな曲を今回演奏できることがとても嬉しいです。

 
-聴きに来てくださるお客様へのメッセージをお願いします。
約一年半の間、公演をお待ちいただいた皆さま、ありがとうございます。聴衆の方々がいらっしゃってこそ、演奏会は成り立つと思うので、しばらく生の音から離れていた方も、ぜひネクサス・ホールで至近距離でチェロの生の音を楽しんでいただけたらと思います。

 


 
 
 
水野 優也(チェロ) Yuya Mizuno
シャネル・ピグマリオン・デイズ2020/2021 参加アーティスト

1998年生まれ、東京都出身。第89回日本音楽コンクールチェロ部門第1位及び岩谷賞(聴衆賞)、黒栁賞、徳永賞、全部門を通じて最も印象的な演奏に対し贈られる増沢賞を受賞。第13回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞。第23回コンセールマロニエ21弦楽器部門第1位。ソリストとして東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、大阪交響楽団などと共演。国内各地でのソロリサイタルをはじめ、パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)、武生国際音楽祭、いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭、宮田大「大ism」、藤沢にゆかりのある音楽家たち、長谷川陽子・向山佳絵子プロデュース「チェロ・コレクション」、チェロ・リパブリカ、Music Dialogue、反田恭平with MLMナショナル管弦楽団、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」、テレビ朝日「題名のない音楽会」などに出演。公益財団法人江副記念リクルート財団、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション、各奨学生。これまでにチェロを河地正美、常光聡、倉田澄子の各氏に師事。特待生として桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース修了。現在、ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽大学にてミクローシュ ペレーニ氏のもとで研鑽を積んでいる。ジャパン・ナショナル・オーケストラメンバー。

INFORMATION

2021年8月21日(土)ソワレ公演
水野優也(チェロ)演奏プログラム


ピアノ:竹澤勇人

ベートーヴェン:モーツァルトの歌劇《魔笛》より
「恋人か女房か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 作品66
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 作品5-1
ストラヴィンスキー:イタリア組曲


2021年8月29日(日)マチネ公演
水野優也(チェロ)演奏プログラム


ピアノ:五十嵐薫子
(都合によりピアニストが変更になりました)

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69 
シューベルト:アルペジオーネソナタ イ短調 D821 

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