FEATURED
2021.8.31 TUE
Exhibition
MIROIRS展
アートコラム
ガブリエル シャネルのポートレート
シャネル・ネクサス・ホールにつづきKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭で展示される「MIROIRS – Manga meets CHANEL」展では、パリのシャネル本社に所蔵されている貴重なアーカイブ写真をマンガ作品と合わせて紹介しています。原作者・白井カイウ&作画家・出水ぽすかとシャネルとの時代を越えた出会いを追体験することができる本展。マンガのインスピレーションともなったガブリエル シャネルのポートレート写真について紐解きます。
シャネル・ネクサス・ホールでの展示風景©CHANEL1965年に撮影されたセシル ビートンによるガブリエルシャネルのポートレート
ポートレートは、被写体を正確に写し出しているのでしょうか?
被写体の何を明らかにし、写真家にはどんな芸術的意図があるのでしょうか?
互いの思惑がいかに交差したかは、緊密な観察によって再現されます。外観はもとより、振る舞い、態度、姿勢、表情、所作、そして演出は、被写体の人となり、アイデンティティ、自分をどのように見せようとしていたかについて雄弁に語っているのです。
数多く残されているガブリエル シャネルのポートレートは、彼女の様々な顔の記録であると同時に、写真家たちが光を当てて浮かび上がらせた彼女のパーソナリティの多様な側面を映し出す鏡です。パリのカンボン通り31番地の階段にはりめぐらされた鏡さながらに。こうしたポートレートはまた、シャネルがどのようにして自分のイメージを意識的に構築し、自らの生涯を伝説として創り上げたかを明かしてくれます。
実際、ブランドの顔としてガブリエル シャネル自身のイメージが使用されています。威厳や孤高、影響力を持つ女性というシャネルのイメージは、人々により強い印象を与えるために、彼女自身が映し出したかったものです。マン レイやセシル ビートンによるポートレートもまた、彼女のイメージをブランドや人々の意識下に植え付け、影響をもたらすものとなりました。
シャネル・ネクサス・ホールでの展示風景©CHANEL左:ガブリエル シャネルとバレエダンサーのセルジュ リファール、1937年
右:マン レイ、1935年
一方、親密なポートレートでは、脆弱で繊細な女性、近寄り難さとは無縁の女性としてのシャネルが映し出されています。ホルスト P ホルストのレンズは夢見るシャネルをとらえ、ジャン モラルは、休暇中に友人に囲まれてリラックスしたシャネルをカメラに収めました。
フランク ホーヴァットの目線では、シャネルは影となり、そのイメージは本人から離脱していきます。このシルエットは実在なのか、それとも幻影なのでしょうか?シャネルは生前にすでに、実像と虚像が入り混じった伝説的人物となっていたのですから、これは無意味な問いでしょう。
シャネル・ネクサス・ホールでの展示風景©CHANEL1958年に撮影されたフランク フォーヴァットによるガブリエルシャネルのポートレート
地上における命が終わっても威光を放ち続ける多くの例に違わず、伝説の圧倒的な力により、イメージや人々の想像力が、シャネル自身を超えていくのです。
マリカ ジャンティ
シャネル ヒストリカル ヘリテージ担当