『「パリ変わらぬパリ、世界で一番美しい街」という歌があります。少し尊大な感じがするかもしれませんが、実際パリは本当にそうなのです。美しさはたいてい表面にありますが、そこに本質が宿ると強力な磁石になります。それこそが私が撮ろうとしているパリなのです—-。』 このように語るエリオット アーウィットは、フランスを愛する両親のもとパリで生を受け、幼い頃をミラノで過ごしました。陸軍に入りフランスに配属されたのをはじめ、今までに数え切れないほどパリを訪れ、パリに強い愛着を感じています。本写真展の作品の数々は、第二次世界大戦直後から今日に至るまで、愛機ライカを片手に何度となくパリを訪れる中で誕生していきました。アーウィットの”パリ”の写真には、古きパリと新しいパリがともに記録され、パリといえば連想されるようなロマンチックなイメージは伴いません。そこには、持ち前のウィットに富んだ観察力で、パリっ子とその犬の日常生活から、絶妙でしばしば喜劇的な一瞬が引き出されています。それは誰もみたことのない瞬間、見る者を深く考えさせ、物語を想像させます。本写真展では、近年出版された『Elliott Erwitt’s Paris』(teNeues、2010)から厳選した作品をご紹介します。