1934年のパリ、白黒映画の全盛時代、銀幕のスターが一世を風靡していたこの年、画期的なコンセプトのフォトスタジオ、スタジオアルクールがパリに誕生します。白黒映画に使われた効果的な照明技術を応用して、奥行と立体感を際立たせると同時に、人物の内面に徹底して焦点を当てた肖像写真が高く評価され、マレーネディートリッヒ、ジョセフィンベーカー、ブリジットバルドー、ジャンマレー、アランドロンなど往年の名優たちをはじめとする、パリ社交界の著名人たちが次々と撮影に訪れました。フランスの思想家ロランバルトは、著書「現代社会の神話」(1957) のなかで評しています。「フランスにおいては、スタジオアルクールでポートレイトを撮影しないうちは、スターではない」と。白黒映画にインスピレーションを得たアルクール独自の表現は、こうした神話とともに現代に受け継がれ、この度の展覧会では、往年の名優たちのみならず、ジャンヌモロー、カトリーヌドヌーヴ、ヴィルジニールドワイヤン、ヴァンサンペレーズ、ジャンレノ、ソフィーマルソー、マリオンコティヤールなど、現在をときめくトップスターたちのポートレイトも一堂に会します。設立以来、77年にわたるスタジオアルクールの神話と軌跡をたどるとともに、20世紀はじめから今日にいたるまでのシネマの変遷をお楽しみください。